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カク

袁紹にとって形勢は悪くない。劉備が曹操に敵対し、しかも交誼を求めてきた。西南に目を向けると、荊州の南陽郡には張繍がいる。張繍は曹操軍を破ったことのある武烈の将であるから、袁紹が北から許を攻めたとき、西から曹操をおびやかしてくれるであろう。張繍と内約を結んでおく必要がある。袁紹はひそかに南陽郡へ使者を遣った。
使者に面会した張繍は、「おお、袁将軍がわたしを招いておられるのか」と、喜色満面となった。張繍の明朗な容態をみた使者は、もはや使命を果たしたも同然であると安心した。だがこの和悦のふんいきは一変した。
袁紹の書簡を読み終えて黙考していたカクが、目をあげ首もあげて使者を強く凝視し、「帰って袁本初にこうことわるがよい。兄弟さえあいいれることができないのに、どうして天下の国士を容れることができようか、と」と、怒鳴りつけるように言った。使者は顔色を変えて立った。
おどろいた張繍は、「そこまでいうことはなかろう」と、とりつくろったが、憤然と去ろうとする使者をあえてひきとめず、「こうなったら、たれに帰順すればよいのか」と、カクに問うた。
「曹公に従うに如かず」 

三国志5 宮城谷昌光p.278.