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最愛のひと

「これまで閨(ねや)を共にしてきたその女性は、婚姻の妨げとして、わたしのかたわらから引き離されたので、彼女にしっかり結びついていたわたしの心は引き裂かれ、傷つけられてだらだらと血を流しました。そのとき彼女はあなた(神)に向かって、今後他の男を知るまいと誓い、わたしのかたわらに彼女から生まれたわたしの息子を残して、アフリカに帰ってゆきました」 
『告白』第6巻15章25節 


良家の令嬢との婚約のため、アウグスティヌスは最愛の女性と離別する。結婚には2年またなければならず、ここで彼は肉の弱さに負け、別の女を引き入れる。しかしすべてがたまらなく空しい。アウグスティヌスは再び教会に近づいていく。 

「わたしは、教会の中で、いろいろな人が、いろいろな仕方で歩いているのを見ました」 
第8巻1章2節 

ミラノの回心の最後の部分(第8巻11章25節)では、一方には「古なじみの女ども」として象徴的に描かれている肉欲、他方には「貞潔の女神」が神々しいすがたであらわれてくる。その間で彼は悶え苦しむが、最後に神のことばを聞いて開いた聖書の箇所がパウロの言葉だった。「イエス・キリストを着よ。肉欲をみたすことに心を向けるな」(ロマ13・14)。ここでアウグスティヌスは回心する。

アウグスティヌスの肉欲に対する罪悪感は、「肉欲は悪である」といったようなマニ教的な一般原則に由来しているのではない。彼の場合にはまったく彼に固有な、いわば彼にとって運命的に課せられた「最愛の女性との別れ」の経験にある。 

神の声を聞き、はげまされて、おもいきって「貞潔の女神」の胸にとびこむとき、彼は同時に、もはや永遠に離れない愛の絆によって、「最愛の女性」と再会するのである。 

参考文献 
アウグスティヌス講話 山田晶p.42,47,48,50,261.